卓話


「 ロータリー財団について 」
RID2680ロータリー財団委員会副委員長
秦 紳一郎 氏(洲本ロータリークラブ)
当 番 岩﨑 重曉 ロータリー財団委員長
1.ロータリー財団の歴史
1-1. アーチ・クランフの構想とポール・ハリスの悲願
ロータリー財団の公式標語はご存知ですか?“Doing good in the world” 世界でよいことをしよう。これは、「財団の父」と呼ばれるアーチ・クランフのアイデアです。彼がのちに振り返って、「小さなひらめき」と呼んだ、この素朴なアイデアからロータリー財団は生まれました。
財団の父アーチ C.クランフは1869年ペンシルバニア州カヌートビルの貧しい家庭に生まれ、幼少の頃、一家でオハイオ州クリーブランドに移住しました。12歳で学校を辞めて仕事につき、グリーブランドの社会福祉施設で夜学することになりました。彼の学問の大部分は独学でした。15歳で木材業になり、18歳のときクヤホガ木材会社の使い走りになり、仕事を終えると電車賃節約のために片道6KMを歩いて通学されたと言われています。経営危機にあったクヤホガ木材会社を再建し、その後同社を購入しました。銀行や汽船会社などの経営者に大成したという、苦労人・立身伝中の実業家です。
ロータリークラブとの関わりは、1911年 42歳でクリーブランドRCのチャーターメンバーから始まります。1913年 クラブ会長になりました。
当時、アーチ・クランフは自分のことを”thinks Rotary, sleeps Rotary, and dreams Rotary.”と「寝ても覚めてもロータリー」の人だった、と言われてます。クラブ会長として、常にクラブの未来を見据えてロータリー運動を将来にわたって持続可能にする方法を模索し、クラブに「非常時基金」を提唱しました。基金という発想=経営危機の難局を乗り越えてきた実業家ならではの経営センスではないかと思います。このアイデアがロータリー財団の原型であったと言われています。
1917年アトランタ大会でのクランフ会長の提案「ロータリーが基金を作り、世界的な規模で、慈善、教育、その他の社会奉仕分野で何か良いことをしようではないか」と、「アーチ・クランフ基金」設立されました。しかし、ロータリアンの多くは無関心、むしろ「ロータリー運動に金銭的奉仕を持ち込むな。」と反発されたため、寄付者がなく次年度大会をホストするカンザスシティが拠出した26ドル50セント(現在の536ドル、約6万円)でスタートしたアーチ・クランフ基金でした。
1928年ミネアポリス大会で5,739ドルの基金をもって「ロータリー財団」、アーチ・クランフは初代管理委員長になりました。
彼はロータリー財団について、①世界平和を推進するための財団として、学生の交換、グループの交換、国際事業を通じての友好を提案しました。②ロータリーアンの奉仕を支えるための基金として「お金だけではたいしたことはできない。個人の奉仕はお金なしでは無力だ。この二つが組み合わされば、文明への天の恵みとなり得る。」というクランフの優れた先見性がその構想となっています。
お金やモノを「価値あるもの」にするのは、相手の立場になって他人を思いやる、人の心である、という「Money×Service=Value」というロータリー財団の存在意義をアーチ・クランフは見据えていたわけです。
1945年第二次世界大戦が終結し、「世界平和」がロータリーの大きなテーマとなりました。ロータリーの創設者であるポール・ハリスは「ロータリー運動は善意を生産する母体である。その善意の普及を通じて、戦争勃発を予防することは私の念願だったが、その願望は遂げられないままに第二次大戦が起こり、悲惨な形で終わった。今後、大戦が起こったら地球は壊滅するだろう。だから第三次世界大戦だけは何としてもロータリーの善意の提唱を通じて予防しなければならない。」と述べ、「善意によって戦争の予防」してほしい、と願いました。
1947年1月にポール・ハリスが亡くなられましたが、「葬儀の献花に代えて、そのお金を国際理解推進のために、財団に譲ってほしい。」と遺言を残しました。そこで追悼寄付の受け皿として、財団に「ポール・ハリス記念基金」が設置され130万ドル(現在の14億円)が寄付されました。
1-2.財団の発展
ポール・ハリス記念基金の創設によって財団の財政基盤が整い、1947年若い研究者の国際交流と教育プログラムによる紛争予防を目指して「高等研究奨学金」のちの「国際親善奨学金」を設立しました。元国連難民高等弁務官の緒方貞子博士も1951-52年度国際親善奨学生であったことは有名な話です。世にある奨学金の多くは、スポンサー国に世界から優秀な学生を集めて、終了後の進路に「縛り」を設けて見返りを期待していますが、財団の奨学金制度はそのような「縛り」はありません。これは一国の利益ではなく世界平和を目的としているからです。
ロータリー財団は、世界理解と平和のための人道的・教育的プログラムの開発とともに成長してきました。
1965年、マッチング・グラントやGSEなどを開始しました。これらは、現在の補助金プログラムのベースとなっています。
1978年、Health, Hunger, Humanityの3ーH補助金を開始しました。これは現在の「ポリオプラス」に発展しました。
2002年、「平和フェローシップ」を開始し、累計1,100名以上のフェローを輩出しています。
2005年から、財団の第2世紀向けて「未来の夢計画 Future Vision Plan」を策定が開始され、時代にマッチした財団の将来ビジョンが示されました。
未来の夢計画は①財団プログラムの運営簡素化②世界の主要テーマへの特化③グローバルな目標とローカルな目標の両立④財団から地区への意思決定権の意向をその特徴とする新たな補助金システムが2013-14年度からスタートしましたのはご承知の通りです。
2.ロータリー財団とは
2-1. 財団の使命と位置付け
ロータリー財団は英語で言いますと、「The Rotary of Foundation of Rotary International」国際ロータリーのロータリー財団が正式名称です。そしてロータリー財団の構成員は国際ロータリー唯一つ、財団の統治主体である管理委員会メンバーはRI会長エレクトが推薦し、RI理事会が選出することになっています。すなわち、ロータリー財団は、国際ロータリーのガバナンスの下にあると言えます。国際ロータリーの使命は 「職業人と地域社会のリーダーのネットワークを通じて、①人々に奉仕し、②高潔さを奨励し、③世界理解・親善・平和を推進すること」です。
一方、ロータリー財団の使命は 「ロータリアンが、人々の健康状態を改善し、質の高い教育を提供し、環境保全に取り組み、貧困をなくすことを通じて、世界理解・親善・平和を構築できるよう支援すること」です。
このようにロータリー財団は「国際ロータリーの使命」を達成するための仕組みである、と言えます。ロータリー財団と国際ロータリーは理念上も実際上もう1つのロータリーとして機能しています。では、なぜロータリー財団は国際ロータリーと別組織、非営利財団法人にしたのでしょうか?その理由は2つあります。
第一に法人運用益の免税や寄付者の所得控除という税制上の優遇措置を得るためです。
第二に多額の資金管理を専門的に行うためです。
その結果、ロータリー財団は、ロータリアンの奉仕活動を支えるために、世界のロータリアンから集められた公金を、独立して公正に管理する金庫番、という位置づけとなります。
2-2. 財団の活動
ロータリー財団の寄付には次の3種類あります。
①年次基金:寄付年度ごとに管理され、寄付の3年後に財団プログラムの原資となります。
②恒久基金:寄付の元金には手を付けずに、毎年の運用益のみが財団プログラムの原資となります。
③使途指定:ポリオプラスや平和フェローシップはじめ、あらかじめ決められた事業にのみ使われます。
寄付によって集められたMoneyお金をValue価値あるものに変えることがロータリー財団の存在意義です。具体的なプログラムとして補助金、その中には地区補助金とグローバル補助金、ポリオプラス、平和フェローシップがあります。
3.財団プログラム
3-1. 補助金プログラム
補助金プログラムには地区補助金とグローバル補助金があります。前者は財団の使命に関する事業、後者は7つの重点分野を対象事業としています。
ロータリー財団において補助金を使用する際のルールが「授与と受諾の条件」というタイトルの文書に記載されています。具体的な内容については割愛しますが、特徴的な条件としては次の3つが挙げられます。
①寄付・寄贈だけの事業はダメです。すなわち、ロータリアンがその事業に参加し献身、汗をかくことが必要となっています。
②他団体の運営や事業に充てるのはダメです。あくまでも財団のお金はロータリアンの奉仕活動を支える基金だからです。
③補助金(=公金)の管理運用については、公正性・合理性・透明性の確保が求められているとともに、対外的な説明責任も必要です。すなわち、ガラス張りの事業構築及び実施、報告が必須です。
3-2. ポリオプラス
ポリオプラスについて説明します。2021年の野生型ポリオウイルスの症例数は、パキスタンで1人、アフガニスタンで1人の合計2人と報告されています。中でもタリバン政権による政変が起こったアフガニスタンの状況についてですが、
・全土に35名しかいないロータリアンが日々奮闘してポリオプラス活動を続けています。
・2021年1月7日、WHO・ユニセフ・タリバンが合同会議を開催しました。その中でタリバンと戸別訪問接種には合意
しませんでしたが、他の処置への支持を表明したと言われています。
・8月中旬、アフガニスタン政府が崩壊後、新しいタリバン指導員は ロータリーが後援する道端の予防接種小屋の安全保障を履行
しています。
・8月17日の週、WHOのグローバルディレクターはポリオパートナーシップリーダー会議にて、アフガニスタンには世界の最も優れたポリオの監視活
動の1つであり、ポリオはどこにも見つからなかったと報告されています。
このように残る0.1%のポリオとの闘いを現在続けていますが、予防接種活動には4つの妨げる要因があります。遠隔地であること、不十分な公共インフラ、紛争、文化的障壁です。しかしながら、ポリオを根絶するまでは、世界中の国が再発生のリスクにさらされ、毎年20万人もの新規患者が発生する可能性が生じます。そして、ポリオが根絶されたならば、
1.ポリオによって一生涯苦しむ子供がいなくなります。
2.低所得国で40億ドルから50億ドルの経費が節減できます。
3.ポリオプラスで構築したインフラを他の疾病、COVID-19など新しい感染症の疾病対策にまわせます。
このような恩恵がもたらされます。
残る0.1%のポリオ根絶に向けてロータリー財団は活動をしています。皆様のご理解とご協力をお願いします。
4.財団の現状
ロータリー財団の収支についてご説明します。2019-20年の収入は、寄付が3億3900万ドル、投資損益400万ドル、合計3億4300万ドルです。一方支出は、プログラム補助金に3億700万ドル、プログラム運営費に2000万ドル、寄付推進・管理運営費に4000万ドル、合計3億6700万$です。つまり、2400万ドルの赤字でした。これは主にCOVID-19による、投資損益の大幅な減少によるものと説明されています。
財団活動の原資は寄付であり、支出の9割以上が財団プログラム、補助金及びプログラム運営費に使われています。
5.目標を定めてここからはじめましょう
5-1.クラブとして、個人として
拡大する財団プログラムに対して、財団の収入源である寄付が少なくなってきてしまっていることはご理解いただいたのではないかと思います。
この現状を地区ロータリー財団委員会として何とか皆様に現状をお伝えするために、このように卓話をさせていただくこととなりました。
ここからはお願いベースのお話ですが、クラブとして、個人として、目標を定めて寄付の拡大についてご検討をいただきたく存じます。
まず、クラブとして、
100%「Every Rotarian , Every Year」クラブ
一年度中に正会員全員が年次基金へ少なくとも25ドルの寄付をして、一人当たりの年次基金寄付額が100ドルに達しているクラブに贈られます。(認証を受けるための手続きは不要)
100%ロータリー財団寄付クラブ
一年度中に正会員全員が寄付分類に関わらず少なくとも25ドルの寄付をして、一人当たりの平均寄付額が100ドルに達しているクラブに贈られます。(認証を受けるための手続きは不要)
という目標があります。
100%ポール・ハリス・フェロー・クラブ
クラブの正会員全員がポール・ハリス・フェローになっているクラブに一度限り贈られます。このバナー認証を受けるには認証を申し込む時点で、クラブの正会員全員がポール・ハリス・フェローになっていなければなりません。
これを目標と定めて、クラブとして取り組んでいただきますこともご検討いただけたらと思います。
100%ポール・ハリス・ソサエティ・クラブ
一年度中に正会員全員が一括でも合計でも1年度中に1,000ドル以上を寄付したクラブに贈られます。
Rotary’s Promiseクラブ
クラブの正会員全員が恒久基金に寄付したクラブに感謝状が贈られます。
次に個人として検討してみてください。
まず、寄付は年次寄付にするのか、恒久基金にするのか、使途指定寄付にするのか、です。
年次寄付は3年後に47.5%が地区財団活動資金として戻ってきて活用することができます。恒久基金は投資され元金が支出されることはなく、利用可能な収益の一部が
ロータリー財団プログラムを恒久的に支えます。使途指定寄付は、ポリオプラスへの寄付などを言います。
続きまして金額です。
ポール・ハリス・フェローとは、寄付分類を年次基金などが1,000ドルに達した個人に贈られる認証です。
ポール・ハリス・ソサイエティーとは、毎年1,000ドルを寄付すると約束した人に贈られる認証です。
ベネファクターとは、恒久基金への寄付または誓約額1,000ドル以上の個人に贈られる認証です。
マルチプル・ポール・ハリス・フェローを繰り返して、累計10,000ドル以上の寄付を行えば「メジャードナー」という認証が贈られます。
ポール・ハイリス・ソサイエティーで毎年1,000ドルを寄付すると約束しましたら10年の累計で10,000ドルが達成され「メジャードナー」という認証が贈られます。
まずは、個人でメジャードナーを目指すことをご検討いただけましたらと思います。
6-2.最後に
2680地区吉岡ガバナー年度におきましては、ガバナー方針としてご覧の寄付目標をたてています。
年次基金寄付 会員一人当たり160ドル以上
ポリオプラス寄付 会員一人当たり40ドル以上
恒久基金寄付 ベネファクター・遺贈友の会会員合計10名増
財団月間にあたり、クラブの会長・幹事・ロータリー財団委員長のご理解とご協力のもとご寄付をお願い申し上げます。
お金とロータリーアンの奉仕の理想を掛け合わせて、価値あるものを作りましょう。そのためには財団寄付を行い、それに皆様の奉仕の精神を掛け合わせた財団プログラムを実施して、「Doing good in the world 世界でよいことをしよう」というアーチ・クランフの優れた構想を実現しましょう。